御滝中学校 木元 裕貴 相撲道

御滝中学校 木元 裕貴 相撲道 中学生の相撲紹介

御滝中学校 木元 裕貴 相撲道 高安

竜電が19歳で幕下の一桁まで番付を上げたときには、いよいよ現れた若手で大型の日本人力士と期待したものだった。ちょうど白鵬の、63連勝がスタートした場所だった。あれから、12年か。

北の若戦の竜電、強かった。以前の、四つ身になって頭を付けようとするけれど、それがむしろ腰が引けてる方が印象に残ってしまっていた竜電。堅実な相撲は良いときは良いけど、負ければ臆病な相撲とも見えてしまう。

北の若戦なんて、そのころのカケラもない。左のかいなを返すと、北の若にとって大事な大事な右の上手廻しを遠くして、腰は引くどころが、真っ向から寄り進んだ。

3場所の出場停止の間の鍛錬か、精神面での変化か。もちろん相手が格下だから、というのもあるか。阿炎の復活劇と重ねるに、阿炎の取口自体はそれほど変わらなかったのに、今場所の竜電の別人のような取口に驚く。再入幕したら元の竜電の取口に戻った、何てことになったら、もっと驚くけど。

そして高安も、12年前ぐらいはバリバリの期待の若手力士だった。強かった、若元春戦。ガッチガチの左四つの若元春に、左四つで力の違いを見せつけた。高安が大関を陥落したのはケガがすべてだったのだから、これから大関に復活しても何の不思議もない。

そして大関陥落と言えば、やはり、やはり正代だ。福岡県のお隣、熊本県出身の我らが正代だ。正直、今場所の正代の立合いを見て、あきらめた。無理だ、大関を維持するのは無理だ、御滝中学校 木元と。

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正代の強みは、立合いの当たりの強さと土俵際の驚異的な逆転劇。その売りである、立合いの当たりが強くない。そこで攻め込まれれば、土俵際では残れない。正代の土俵際での巧さは、実は乱戦の展開でこそ発揮される。一気に攻められれば、悲しいかな、残す腰は無い。

だから、無理だと。だから私も、ここまで正代については書かなかった。あきらめていたから。しかし思い出したのだ、正代が大関に上がったのは、立合いの当たりと土俵際の逆転と、もう一つ有ったのだ。強引な、すくい投げだ。無理やりに相手を振って、局面を打開してしまう。

今のこの難局を打開するのは、あの強引なすくい投げかもしれない。無理やりに相手を振る、ムチャブリのすくい投げの連発で、勝ち越しを目指して、振って振って、振りまくれーーー。

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大相撲3月場所も千秋楽を残すのみとなったけど、今場所は見応えのある相撲が多い。優勝争いも盛り上がっているし、新鮮な顔ぶれで争っているし、こういう新時代の息吹を感じさせる場所は面白い。記憶にも鮮明に残る、と思う。最近、記憶力があやしいけど。

正代VS高安、これは正代の今場所の勝ち越しへの決め手となる伝家の宝刀、すくい投げがお見事だった。若隆景のおっつけが右からでも左からでも威力があって凄いって話だけど、正代のすくい投げも右からでも左からでも強烈なのだ。思い切りの良さもあるし。

一番正代らしい勝ち方で、角番を脱出した。正代らしい、解放感のある勝ち方だった。豪快に右へ左へと振るすくい投げは、角番という意識さえも忘れさせるほどだったのではないか。

あの、パン食い競争的立合いと相まっての解放感。正代の立合いとすくい投げは、やはりセット商品だな。あ、あの風貌とコメントともセットだ。中盤戦からすくい投げが出始めて、正代の角番脱出は濃厚だと思ったけど、勝って良かった。

そして若隆景VS貴景勝も良い相撲だった。押し切れるのか、廻しを引けるのか、その一瞬が勝負の分かれ目となる取組。かつての千代の富士VS小錦のような、緊迫感のある相撲だ。

貴景勝が一気に押し込んだ場面、引きを見せた場面、そして若隆景が廻しを引いた場面。どの場面も大相撲の醍醐味にあふれた、美しい場面だった。緊迫感のある美しさだった。滝中学校 木元 裕貴 相撲道

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それにしても、廻しを引いたときの若隆景の腰の構えの素晴らしさ。前々回にも書いたが、きちんと上半身と下半身の動きが連動した、腰の重心から廻しを引いている感覚だ。う~~ん、ちょっと言葉の表現が変で分かりにくいな。端的に言えば、千代の富士貴乃花のような、超一級品の四つ身に近い。

琴ノ若VS御嶽海は、あの微妙な客席の反応が印象に残った一番となった。15日間を見据えた、負けるときの御嶽海の淡白さは誰もが認識してるけど、琴ノ若に対しても「これもか!」って、観客のほとんどが思っただろう。琴ノ若の強さも巧さも、好勝負にならなかったから伝わってこなかったし。

若隆景と高安に絡んだ取組が白熱した展開の相撲が多い今場所で、琴ノ若の強さも巧さも伝わりづらい。何と言うか、真綿で包まれたように土俵を割る相手力士、って感じだ。確か、それは照国だったな。千秋楽は、これからライバルとなるであろう豊昇龍だ。真綿で包めるか。

御滝中学校 木元 裕貴 相撲道

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やった、やりました。正代が、ついに目を覚ましました。今まで寝てたわけじゃないけれど。これで5勝6敗。大きい、本当に大きい白星だ。

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久々に良い音を立てて、立合いに当たれた。あの優勝したころの、「一人パン食い競争」と恐れられたころの、あの立合いが戻ってきた。あれほど何も出来なかった若隆景を、これまた久々に見た気がする。立ち遅れで立ち腰の、偶然の「一人パン食い競争」では決して無い。無いはずだ。はずだ、と思う。

場所前のNHKの九州沖縄出身力士の番組で、正代は立合いの当たりについて「立合いの距離感が難しい」と答えていた。なるほど、と思った。今日は若隆景が、見事な踏み込みを見せた。あっと言う間に、距離が狭まった。今日の距離感だ、正代!

しかしなぁ、若隆景のように鋭く踏み込んでくれないと、正代のベストの距離感は実現されにくいのかも。踏み込みの鋭くない力士には、どうする、正代。心配だ。

いや、自分で距離感はつかんでいるはずだ。勝ち名乗りを受けた土俵上で、そんな顔をしていた。自信満々の表情に、私の目には映った。違うかもしれないが。12日目の霧馬山戦でも当たれたら勝ち越しは行ける、と思う。一人パン食い競争の復活だ。勝負だ、正代!

そして前回、取口は変化したわけではないと書いた豊昇龍。訂正する、少し変わってきている。下手廻しよりも、上手廻しを軸にした相撲に変わってきた。相撲が大きくなってきた。

今までの下手廻しで、まずは守りを固めながらという相撲から、がっちり上手廻しの相撲へ。それは特に今場所の翠富士戦と翔猿戦の相撲で発揮された。小さい相手を挟みつけるように、上手廻しで相撲を取った。

先場所、翔猿と翠富士に連敗したときに、豊昇龍には少しガッカリって感じでブログを書いた。そのガッカリした対戦相手にこそ、取口が変わる切っ掛けがあった、みたいな話だ。苦手だったからこそ、克服したときのリターンが大きかったってことか。

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大相撲九州場所も残り2日。まずは正代、立合いに当たれなかった。立ち遅れ。あの立合いの難易度は、やはり相当なものなのだろう。あれで大関に上がったんだから、あれの威力が落ちれば、それは致し方ない。あれ=パン食い競争で、それ=大関陥落だ。念のため。

優勝争いは豊昇龍が大事な貴景勝戦を落として、高安が単独トップに立った。前日の王鵬戦も関係していたのか、豊昇龍は貴景勝を見る場面があった。一気には行けなかった。

それはそれで良かったと思う。突き押しの大関相手に見て相撲を取るなんて、むしろ無謀というか、横柄というか。しかし貴景勝は、いなしも突き落としも引きも巧いから、今日の相撲で良かったかもしれない。今日のように相手を見ても、少しずつ勝てるようになれば良い。

優勝は、私も高安に優勝してほしい。平成生まれ初の関取と呼ばれたのが、白鵬の63連勝のときだから、そのときは次世代の旗頭という印象だった。なつかしい。

一年納めの場所の優勝力士として相応しいというか、高安が優勝したら、ひょっとしたら泣くかもね。とんねるず風に言うと、「泣くな、い~や、泣くね」だな。

さて十両では、いつの間にか北青鵬が優勝しそうな感じがしてきた。強そうに見えないけど、負けにくい力士。入幕するころの大鵬も、負けにくい力士と呼ばれていたらしい。似たような雰囲気だったのかな。

北青鵬は最近の力士に多い、足が長めの力士だ。しかし相撲を取ると、足の長さのデメリットを感じさせない。考えてみると、野球にしろバスケットボールにしろ何にしろ、足が長くて能力の高いアスリートは山ほどいる。力士体型がどうのこうのと、このブログでも度々書いていたけど、もう関係ないみたいだ。

北青鵬は力士体型でなくとも、アスリートとして優秀なのだ。そして相撲勘も、相当に良い。じわじわと相手を追い詰める、その動きに非常に高い相撲センスを見ることが出来る。負けにくい北青鵬が、どこまで番付を上げても負けにくいのか、どうしても期待するのだ。